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行政法 行政事件訴訟法 (H25-18) 


取消訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。


1 取消訴訟の原告は、処分行政庁に訴状を提出することにより、処分行政庁を経由しても訴訟を提起することができる。

2 裁判所は、必要があると認めるときは、職権で証拠調べをすることができるが、その結果について当事者の意見をきかなければならない。

3 取消訴訟の訴訟代理人については、代理人として選任する旨の書面による証明があれば誰でも訴訟代理人になることができ、弁護士等の資格は必要とされない。

4 裁判所は、処分の執行停止の必要があると認めるときは、職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止をすることができる。

5 取消訴訟の審理は、書面によることが原則であり、当事者から口頭弁論の求めがあったときに限り、その機会を与えるものとされている。



解答 2  



行政事件訴訟法は民事訴訟法の特別法である(法7条)ということを思い出せば容易に正解できるでしょう。


肢1 誤

行政事件訴訟法は民事訴訟法の特別法です。

ですから、行政事件訴訟法における訴訟手続の流れは、民事訴訟における訴え提起から判決までの訴訟手続の流れと共通します。

取消訴訟を開始するためには、まず、原告が訴状を裁判所に提出します。その訴状を裁判官が審査し、必要な事項の記載の不備などがないか確認します。記載不備があれば、補正命令をし、それでも補正しない場合は、裁判長により訴状却下命令が出されます(民訴137条)。

したがって、行政不服審査法における不服申立てと異なり、取消訴訟の原告は、処分行政庁に訴状を提出することにより、処分行政庁を経由しても訴訟を提起することはできません。

肢2 正

民事訴訟では、当事者の紛争が解決すればよいので当事者のみにしか判決効が及ばないのに対して(相対効)、行政事件訴訟における取消訴訟の判決には対世効があり第三者にも影響を及ぼします。

ですから、民事訴訟における当事者主義を原則としつつ、判決の公共性が強いため職権主義的要素も多く加味されています。

したがって、職権証拠調べもすることができます(行訴法第24条)。

職権証拠調べとは、当事者が証拠を提出しなくとも裁判所が積極的に職権で証拠を調べることをいいます。

ただし、裁判所が真実究明のために職権で証拠等収集し証拠調べをするので、当事者にとって不利益な証拠となる場合もあります。そのため、証拠調べの結果について当事者の意見を聞かなければならないのです。

肢3 誤

行政事件訴訟法は民事訴訟法の特別法です。

民事訴訟法では、無資格者の三百代言(詭弁(きべん)を弄 ろうすること)による被害を防ぐために、原則として、弁護士のみがなることが認められています(弁護士代理の原則、民事訴訟法54条1項本文)。

したがって、誰でも訴訟代理人になれるわけではありません。

なお、本問とは直接関係ないですが、簡易裁判所においては、司法書士にも訴訟代理権が認められており、また、特許等の審決取消訴訟等については弁理士にも訴訟代理権が認められています。

肢4 誤

行政不服審査法において、処分庁の上級行政庁である審査庁は、処分庁に対して一般的指揮監督権を有するから、職権に基づく執行停止も一般的指揮権の発動として正当化されます。

これに対して、行政事件訴訟法の執行停止については、裁判所は処分庁の監督機関ではなく、処分庁に対して一般的指揮監督権を有するわけではありません。

裁判所はあくまでも第三者的立場で公平かつ客観的に判断するので職権で執行停止をすることはできないのです。

できるとすると、裁判所が行政権に介入することになるので三権分立に反することにもなるのです。ですから、申立てのみによって、裁判所は執行停止することができるのです。

行政不服審査法との違いを押さえておいてください。

肢5 誤

行政事件訴訟法は民事訴訟法の特別法です。

よって、訴訟追行においても当事者主義が原則です。

そのため、原則として口頭弁論が原則であり、例外的に書面で訴訟追行がなされます。

なお、行政不服審査法は、簡易迅速な紛争解決手続きであるため、実体審理手続においても書面主義が原則です。

書面審理主義は、資料が確実で簡易迅速にできるという利点もありますが、その一方で印象が間接的で、また当事者の真意を汲みにくいという欠点もあります。

このような書面審理主義の欠点を補うために、審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人又は参加人の申立てにより、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えることができるのです。

行政事件訴訟法の場合の原則と例外が逆となっていますので、両者の違いを押えておいて下さい。





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