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憲法 人権 (H28-4)


最高裁判所は、平成 11 年に導入された住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)について、これが憲法13条の保障する自由を侵害するものではない旨を判示している(最一小判平成20年3月6日民集62巻3号665頁)。次の記述のうち、判決の論旨に含まれていないものはどれか。


1 憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しており、何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示または公表されない自由を有する。

2 自己に関する情報をコントロールする個人の憲法上の権利は、私生活の平穏を侵害されないという消極的な自由に加えて、自己の情報について閲覧・訂正ないし抹消を公権力に対して積極的に請求する権利をも包含している。

3 氏名・生年月日・性別・住所という 4 情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。

4 住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上および行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。

5 住基ネットにおけるシステム技術上・法制度上の不備のために、本人確認情報が法令等の根拠に基づかずにまたは正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示・公表される具体的な危険が生じているということはできない。



解答 2


演習問題10肢イを勉強していれば、本件の判例を知らなくても容易に正解できるでしょう。


自己に関する情報をコントロールする個人の憲法上の権利は、車内広告放送事件(最判昭和63年12月20日)において伊藤正巳裁判官の補足意見で登場しているが、最高裁の判決では、プライバシー権が13条で保障されているとまでは判断しておらず、また最高裁の判決そのものではない。

以下の判例にもあるとおり、判例では、「何人も,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有する」として自己に関する情報をコントロールする権利の消極的側面のみ保障されるとしか判示されていないので注意しましょう。


その他の肢は、以下の判例(最判平成20年3月6日)を読んでおきましょう。なお、各肢と以下の①~⑤の番号は一致しています。


『①<憲法13条は,国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり,個人の私生活上の自由の一つとして,何人も,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解される。>

 そこで,住基ネットが被上告人らの上記の自由を侵害するものであるか否かについて検討するに,住基ネットによって管理,利用等される本人確認情報は,③<氏名,生年月日,性別及び住所から成る4情報に,住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち4情報は,人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり,変更情報も,転入,転出等の異動事由,異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので,これらはいずれも,個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。>

 これらの情報は,住基ネットが導入される以前から,住民票の記載事項として,住民基本台帳を保管する各市町村において管理,利用等されるとともに,法令に基づき必要に応じて他の行政機関等に提供され,その事務処理に利用されてきたものである。そして,住民票コードは,住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等を目的として,都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割り当てたものであるから,上記目的に利用される限りにおいては,その秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない。

 また,前記確定事実によれば,④<住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等は,法令等の根拠に基づき,住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。>

 住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険はないこと,受領者による本人確認情報の目的外利用又は本人確認情報に関する秘密の漏えい等は,懲戒処分又は刑罰をもって禁止されていること,住基法は,都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を,指定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置することとして,本人確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じていることなどに照らせば,⑤<住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり,そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない。>』





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