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憲法 人権 (H14-7)


次のア~オの記述のうち、問題となる規制の態様が、「事前抑制」に当たり、なおかつ、関連する最高裁判例の趣旨に合致しているものは、いくつあるか。


ア  外国から輸入しようとした出版物にわいせつな表現が含まれている場合、これを税関が輸入禁制品として没収するのは、違憲である。

イ  裁判所が、仮処分の形で、名誉毀損的表現を含む書物の出版を前もって差し止めるのは、当事者に充分な意見陳述の機会が与えられていれば、合憲である。

ウ  新しく小売市場を開設しようとするものに対して、既存の小売市場との距離が接近していることを理由に、県知事がこれを不許可とするのは、違憲である。

エ  勤務時間外に公務員が支持政党のポスターを公営掲示場に貼りに行った行為を、公務の政治的中立性を理由に処罰するのは、合憲である。

オ  高校の政治経済の教科書を執筆し、その出版を企てるものに対して、国が予めその内容を審査し、記述の変更を求めるのは、違憲である。


1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ



解答 1

 

事前抑制に関する判例の知識で解くこともできますが、そのような知識を思い出せなかったりしても、定義にあてはめれば解答を導くことができます。

事前抑制とは、公権力が表現行為に先立って審査して、表現行為が世の中に出る前に抑制してしまうことをいいます。検閲の定義を膨らませたものですので同じように考えればいいですね。


主体=公権力

対象=表現行為全般

目的=表現行為の禁止

時期=発表前


(肢ア)

主体=税関

対象=出版物

目的=関税徴収手続きの一環

時期=外国で発表済み

目的および時期において事前抑制の定義にはあてはまらないですね。よって、誤りです。

(肢イ)

主体=裁判所

対象=名誉毀損的表現を含む書物

目的=出版の差止

時期=出版前

定義に全てあてはまりますから、事前抑制ですね。また、名誉毀損的表現なので他者の名誉やプライバシーなど人格が回復できないほど傷つけられる場合にあたります。ですから、例外的に事前抑制が許され合憲なのです。

よって、判例の趣旨に合致しています。なお、北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日)からの出題です。

(肢ウ)

主体=県知事

対象=小売市場の開設

目的=小売市場の開設の不許可

時期=小売市場の開設前

対象、目的、時期すべてが表現行為と異なり、事前抑制の定義にあてはまりませんね。よって、誤りです。

(肢エ)

これもすでに印刷して発表済みのポスターを公営掲示場に貼りに行った行為に対する処罰なので、事前抑制の定義にあてはまりませんね。よって、誤りです。

(肢オ)

教科書も他の一般図書としては発表できるので、事前抑制の定義にあてはまりませんね。よって、誤りです。


以上より、イのみが合致しているので、1が正解となります。結局判例を知らなくても事前抑制かどうかの判断ができれば正解を導くことができる問題でした。




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