憲法 人権 (H16-3)
投票価値の平等に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に適合していないものはどれか。
1 形式的に1人1票の原則が貫かれていても、投票価値が平等であるとは限らない。
2 選挙人資格における差別の禁止だけでなく、投票価値の平等も憲法上の要請である。
3 投票価値の平等は、他の政策目的との関連で調和的に実現されるべきである。
4 法改正に時間がかかるという国会側の事情は、憲法判断に際して考慮すべきでない。
5 参議院議員の選挙については、人口比例主義も一定程度譲歩・後退させられる。
解答 4
肢1から4までは衆議院議員定数不均衡事件(昭和63年7月17日)からのほぼそのままの出題です。
また肢5もテキストで紹介した参議院議員定数不均衡事件に関する問題です。
ですから詳細な解説はテキスト参照してください。
1 正
その通り。投票の価値の平等は、一人1票が形式的に貫かれても達成できるものではない。
2 正
その通り。投票価値の平等は、憲法14条で保障されている。
3 正
その通り。投票価値の平等は、他の政策目的との関連で調和的に実現されるべきである。
4 誤
違憲となるのは、《1》合理的裁量を超える投票価値の不平等《2》合理的期間の経過の2つの要件を満たした場合です。
合理的期間の経過が要件とされているのは、人口の異動等の事情が絶えず変化する中で投票価値の平等を実現するためには、法改正のための国会での審議も必要だからなのです。
法改正もできたはずの期間が経っても、なお合理的裁量を超える投票価値の不平等の状態が解消されていないときに初めて違憲とすべきなのです。
ですから、法改正に時間がかかるという国会側の事情は、憲法判断に際して考慮すべきなのです。
5 正
参議院議員は、衆議院と異なり解散がなく、任期6年という安定した地域における民意を反映するものであり、地域代表的な性格があるので、その格差が衆議院議員の選挙よりも大きくなっても、仕方がないのです。
そのため、参議院議員の選挙については、人口比例主義も一定程度譲歩・後退させられるのです。