民法 債権 (H20-33)
A、B、C三人がDから自動車1台を購入する契約をし、その売買代金として300万円の債務を負っている場合に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア この場合の売買代金債務は金銭債務であるので不可分債務となることはないため、Dは、A、B、Cに対して、それぞれ100万円の代金支払請求しかすることができない。
イ Aは、Dに対して、A、B、C三人のために自動車の引渡しを請求することができるが、Dは、A、B、C三人のためであるとしても、Aに対してだけ自動車の引渡しをすることはできない。
ウ 購入した自動車がA、B、C三人の共有となった場合には、Aは、自動車の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
エ 自動車の売買代金300万円について、A、B、Cの三人が連帯債務を負担する場合において、Aの債務についてだけ消滅時効が完成したときは、Aの負担部分については、BおよびCも、その債務を免れる。
オ 自動車の売買代金300万円について、A、B、Cの三人が連帯債務を負担する場合において、Aについては制限行為能力を理由に契約の取消しが認められるときには、Aの負担部分については、BおよびCも、その債務を免れる。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・エ
5 エ・オ
解答 4
ア 誤
売買代金債務は金銭債務という可分債務ですから、分割債務とも思われます。
しかし、分割債務か不可分債務になるかどうかというのは、性質上金銭債権か否かで当然に決まるというものではなく、当事者の意思によってもどういう種類の債務にするか決められるのです。
428条にも「その性質上又は当事者の意思表示によって」とあります。
ですから、本問のような売買代金債務であっても当事者の意思によって、不可分債務になりえるのです。
イ 誤
不可分債権とは、分割不可能である請求対象に対する債権について複数の債権者がいる場合に、各債権者が単独で自己に債権全部を給付すべきことを請求できるものをいいます。
この定義にあてはめれば、本問が不可分債権であるということがわかりますね。
つまり、ABCは、共同で自動車1台を購入する契約しているので、自動車という不可分なものを給付の対象とした自動車の引渡請求権を有しています。
ですから、Aは単独でDに対して請求することで絶対的効力が生じ、Dは債権者の1人であるAに対して履行すれば債務を免れることができます。
ウ 正
この問題は、共有に関する問題ですが、連帯債務関係においても所有権の帰属の側面からみれば共有ですから、共有の法律(249条以下)で規律されるのは当然ですね。例えば、自動車を3人で共有していた場合、自動車を三分の一ずつ分割して利用することはできませんから、各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができるのです(249条)。
エ 正
時効については負担部分のみ他の債務者に対して絶対的効力が生じるのです。
ですから、Aの債務についてだけ消滅時効が完成したときは、Aの負担部分については、絶対効が生じ、BおよびCも、その債務を免れるのです。
オ 誤
絶対的効力が認められているもの以外は、原則どおり相対的効力しか有せず、連帯債務者の1人について制限行為能力を理由に契約の取消しの原因があった場合でも、他の債務者の債務の効力には影響しません(433条)。
連帯債務の場合、各自が独立に債務全部を負っているからです。