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民法 債権(H24-32)


無償契約に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。


1 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって、その効力を失う。

2 贈与契約においては対価性を維持する必要がないため、目的物に瑕疵があったとしても、贈与者は、それについて善意であるか悪意であるかにかかわりなく担保責任を負わない。

3 使用貸借においては、借用物の通常の必要費については借主の負担となるのに対し、有益費については貸主の負担となり、その償還の時期は使用貸借の終了時であり、貸主の請求により裁判所は相当の期限を許与することはできない。

4 委任が無償で行われた場合、受任者は委任事務を処理するにあたり、自己の事務に対するのと同一の注意をもってこれを処理すればよい。

5 寄託が無償で行われた場合、受寄者は他人の物を管理するにあたり、善良なる管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない。


解答 1


肢1 正

第552条そのままの問題です。この条文自体は少しマイナーですので、本問自体は確実に正誤の判断がつかなくても、残りの肢4について消去法で何とか正解を導ければよいでしょう。

(定期贈与)

第552条

 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。

贈与者が受贈者に対して定期的に無償で財産を給付することを約束する契約をいいます。

例えば、毎月一定の学費や生活費を与えるような場合です。

当事者の個人的な関係が重視されるため、贈与者又は受贈者の死亡によって効力を失います。


肢2 誤

本問も第551条そのままの問題です。

(贈与者の担保責任)

第551条

1 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。

2 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。

贈与契約は、無償契約であり、そのまま給付するのが当事者の通常の意思に合致するので、贈与者は受贈者に担保責任を負わないのが原則です。

売買などの有償契約と異なり、無償契約である贈与では、たとえ契約当初から贈与物に欠陥があっても、現状でその物を引き渡す以上の責任を贈与者に負担させることは適当でないとされているからです。

例えば、パソコンを贈与するという場合に、パソコンに欠陥があった場合でも贈与者は何ら担保(=保証)責任を負わないということです。

しかし、贈与者が瑕疵や不存在について知りつつそれを受贈者に告げないで契約をしたのであれば、担保責任を負うのです。

パソコンに欠陥があることを知っていて、そのことを告げていたら受贈者も贈与契約を結ばなかったからです。


肢3 誤

本問も第595条からの問題です。

第595条

1 借主は、借用物の通常の必要費を負担する。

2 第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

通常占有者は必要費を真の所有者に費用償還請求することができます(196条)。

しかし、使用貸借契約の借主も占有者ですが、無償で使用・収益しているので必要費は借主が負担します。

これは使用貸借契約の特殊なところですので押さえておきましょう。

もっとも、目的物の価値を増加させる有益費については貸主に対して償還請求することができます。

 これは通常の占有者や買戻しの場合と同様です。

 第595条2項に規定されている通り、第583条2項で準用しています。

第583条2項

買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第196条の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

 但書にあるとおり、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができるのです。


肢4 誤

本問も第644条からの問題です。

第644条

 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

委任契約というのは、ある力量をもった受任者を信頼して事務を任せる契約ですから、受任者には、自己の財産におけるのと同一の注意義務以上に一般に期待される水準の注意義務(=善管注意義務)があるのです。

このことは、報酬の有無に関わらず、受任者という立場に基づくものですから、有償・無償に関わらず、受任者には善管注意義務があるのです


肢5 誤

本問も第659条からの問題です。

第659条

 無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。

寄託契約は、もっぱら寄託者のための契約ですから、受寄者に受任者のような期待される注意義務はないので、無償ならば自己の財産におけるのと同一の注意義務しかなく、有償の場合に、善管注意義務があるのです。





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