行政法 総論 (H3-34改題)
行政行為の効力に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
1 不可争力とは、行政行為に瑕疵があっても、その瑕疵が重大かつ明白でない限り、それを有効なものとして通用させる力をいう。
2 不可変更力とは、主体、内容、手続等に瑕疵がなく、有効に成立した行政行為の効果を相手や他の行政機関に承認させる力をいう。
3 拘束力とは、行政行為がその性質により、又は一定の手続を経た結果として、その自由な取消又は変更を制限することをいう。
4 公定力とは、行政行為に対しては法定期間内に限り訴訟が認められ、この期間の経過後はその効力を争い得ないことをいう。
5 執行力とは、私法行為と異なり、裁判所の判断を待つまでもなく、行政行為の内容を行政庁が自力で実現しうることをいう。
6 行政行為の効力の発生時期は、法令が特段の定めをしている場合を除き、相手方が現実にこれを了知し、又は相手方の了知しうべき状態におかれた時である(H6-33-1)。
解答 2つ
1 誤
不可争力とは、行政行為に対して争うのは法定期間内に限られ、この期間の経過後はその効力を争い得ないことをいう。本肢は公定力についての説明である。
2 誤
不可変更力とは、審査請求に対する裁決等ある一定の行政行為について、行政庁自らによる職権取消し・変更がなしえない効力をいう。本肢は拘束力の説明である。
3 誤
拘束力とは、有効に成立した行政行為の法律効果に、相手方及び行政庁自身が拘束される効力をいう。本肢は不可変更力の説明である。
4 誤
公定力とは、たとえ行政行為に瑕疵があっても、その瑕疵が重大かつ明白で無い限り、権限ある機関がこれを取り消さない限り、一応有効なものとして公定される効力のことをいう。本肢は不可争力の説明である。
5 正
自力執行力とは、相手方の意思に反して行政行為の内容を行政庁が自力で実現しうる効力をいう。
6 正
行政行為の効力発生時期については、民法の意思表示の一般原則に従い、到達主義となる(民法第97条)。また、「到達」とは、相手方が現実にこれを了知し、又は相手方の了知し得べき状態に置かれた時とされている(最判昭和29年8月24日)。